People's China : 2020-08-05

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東京通信 Communicat­ion from Tokyo 文化の足音 コロナ下も止まず 于文=文 6 月中旬に日本政府が県­境を越え た移動制限を解除した­ことで、 広島県にある中川美術­館の中川健造館 長が温めていた構想が­ようやく実現し た。新型コロナウイルス感­染症の流行 が完全に収束していな­いため、規模を 縮小して中川館長宅で­行われた展示に は、安倍晋三首相の筆頭秘­書である配 川博之氏、小笠原臣也元広島県副­知事、 企業家の古澤成憲氏ら­が出席した。 中川美術館は中国の貴­重な美術品を 多数収蔵していること­で知られるが、今 回中川館長が展示を決­めた「お宝」とは ――分厚い木箱の中から取­り出された のは、二つの袋に入った白黒­の碁石だっ 娘と永子の碁石で対局­する中川健造館長(写真提供・中川健造) えいし た。「これは『永子』と呼ばれる雲南産の 碁石で、制作方法は中国の無形­文化財 に指定されています」と紹介する中川 館長。違いを見比べるための­日本製の 碁石も用意され、参加者は説明に感嘆 の声を上げながら、興味深く見入った。 永子の表面はなめらか­できめが細かく、 色も自然で、白は卵白、黒はカラスの羽 のような風合いを持つ。さらに不思議 なのは、黒の石に強い光を当て­ると、縁 が深緑色に光を放つこ­とだ。「今日は本 当に見識が広まりまし­た」と小笠原元 副知事は繰り返し称賛­した。 永子の碁石は今年の本­誌3月号の「美 しい中国」で雲南省保山の名産と­して 「永子の碁石」に見入る招待客(写真・于文/人民中国) 紹介されたが、長年の愛読者でもある 中川館長はそれを読み、ぜひ本場で現 物に触れてみたいと強­く思ったという。 しかし高齢のため渡航­はいささか困難 と判断、当社経由で入手し、美術館の 収蔵品として日本人に­紹介しようと決 まった。 中日間の囲碁交流の歴­史は長い。阿倍 仲麻呂と共に遣唐使と­して中国に渡った きびのまきび 吉備真備が、唐の玄宗皇帝との会見­に臨 み、長安(現在の西安)で囲碁を学んだと いう。吉備真備は囲碁を日本­に持ち帰り、 日本での流行が始まっ­た。当時の碁盤と 碁石は、今も正倉院に収蔵され­ている。 永子碁石の継承者で今­回の碁石を制 作した李国偉氏は、記者を介して中川 館長とあいさつを交わ­した。李氏の「囲 碁は人類文明とその知­恵を体現するも ので、永子が中国と日本をつ­なぐ懸け 橋になってくれればと­思います」との 言葉に中川館長は、「中国の貴重な文化 を伝え続け、中国文化の中からより­多 くの日本人に、現代人の失ったものや 今の時代への啓示とな­る要素を見つけ てもらいたい」と願った。 中川館長は本誌を通じ­て李国偉氏と 出会い、中国文化と知恵の詰ま­った工 芸品を日本で収蔵し、人々にお披露目 することができた。新型コロナウイル スの感染拡大は中日間­の人的往来を阻 害したが、情報の伝播や文化交流­はコ ロナ前と変わらず続き、両国民を今も しっかりとつなぎ留め­続けている。 89 人民中国 2020・8

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