サステナブルなショップ:リテールの未来レポート
社会的および環境的な目標へ近づくために、リテールは極めて重要な役割を担うことができる。ファッションのキープレーヤーたちが実践している、店内の革新的なサステナブル戦略をWeArが検証する。
2015年、国連加盟国は、人々と地球の平和と繁栄のための共通計画を策定し、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した。このアジェンダは、17項目からなる持続可能な開発目標(SDG)の骨子であり、12項には「持続可能な生産消費形態を確保する」が掲げられている。
多くのブランドは、様々な角度からのアプローチでこの目標を達成しようと、コンセプトや作品から、ストアデザイン、エネルギー排出量に至るまで、サステナブル戦略を試みている。
そのコンセプトの1つ、トロントのGreen Peaは「世界初のグリーンなリテールパーク」であると断言する。2,000以上の植物が庭を埋め尽くす、15,000㎡を超えるこの公園はリサイクル素材で建設されており、空気汚染を88%まで削減するという。一方、Green Peaの屋内は、5フロアで構成されるサステナブルなショッピングスペースを提供し、クリーンエネルギーの自動車から、環境に優しい家具、サステナブルファッションまでを用意している。サステナビリティとゲーミフィケーションを組み合わせたGreen Pea Appを使えば、インタラクティブなショッピング体験が可能になり、顧客の興味を引きつけながら、教育的な価値のあるインストア体験を提供することができる。
大西洋の向こう、ブラジル・サンパウロのConceito êは、自然が人類の消費に打ち勝つ世界を描いたスペースを通じて、アマゾンの熱帯雨林破壊が加速していることへの認知度向上を目標にしている。建築家のMartina Brusius とAndré Romitelliは、タイルを再利用した構造を開発し、生分解可能なボール紙の構造物の中に植えた植物を店内に配し、土壌を肥やし、緑地が自生するよう促進している。
LVMHによると、温室効果ガス排出量の約70%が現在、店内のエネルギー消費から生じているという。同企業が店内で展開しているプログラムである、2016 LIFE(LVMH Initiatives For the Environment/環境に対するLVMHのイニシアティブ)は、ブランドが店内のエネルギー効率を高めることを促している。このプログラムでLED照明を導入したことにより、店内の温室効果ガス排出量を30%まで削減することに成功した。このほど、LIFE 360プログラムを立ち上げ、生物の多種多様性や循環性から、建物用断熱材、空調設備、廃棄物管理に至るまで、あらゆるものを網羅しながら、3年、6年、10年後に企業内全体で100%再生可能なエネルギー目標を達成する、総合的なロードマップを作成していく。
廃棄物は、環境汚染の最たる原因の1つであり、あらゆる点でブランドの懸案事項だ。Ganniやプラダは、環境に配慮したステップを踏み出し、店内で顧客の興味を引き出しながら、環境に関する知識を提供していこうとしている。2021年秋冬に向けて、プラダはキャットウォークの舞台設備を、世界のリテールやポップアップの設営でアップサイクリングする計画だ。一方、北欧のスーパーブランド、Ganniの店舗は、プラスチック廃棄物をリサイクルしたテラゾ式の器具や、デッドストックで作った布地の室内装飾品を使用している。どちらも、ブランドや家具のリテーラーから入手したものだ。この両ブランドの取り組みは、ソーシャルコマースとサステナブル・イノベーションの両者をバランスよく備えており、エンゲージメントやエコフレンドリー、教育力のあるリテール空間を介して、ブランドの持続可能性の取り組みへの認知度向上という重要な活動にスポットライトを当てている。