世界の繁栄へ新たな一章
中国人民外交学会名誉会長、元外交部長
日本も、中国の発展のチャンスを捉えて、自国の
発展を強く推し進めた。
改革開放後40年の曲折を振り返ると、中日両
国が戦争の影から抜け出し、冷戦時代のゼロサム
ゲームを乗り越え、互恵協力の大きな成果を収め
られた大きな理由は、結局のところ、平和と発展
という時代の流れをしっかりつかみ、あくまでも
両国民の根本的な利益を踏まえ、お互いの発展を
自らのチャンスと見なし、平和・友好、協力・ウイ
ンウインの正しい道を歩んだからである。
中日ウインウインの新たなチャンス
中国は過去40年、改革開放によって極めて大
きい成果を収めた。しかし、世界最大の発展途上
国でもあるわれわれが、これから質の高い発展
という目標を実現するためには、改革開放とい
う根幹となる国策をいささかも揺るがさず、堅
持して行かなければならない。中国は改革を全
面的に深化させ、高いレベルでの対外開放を続
ける。開放のドアはますます大きく開かれ、その
レベルはますます高くなるだろう。そして、中日
のより高いレベルでの互恵協力という広い可能
性を切り開き、さらに大きなチャンスを創り出
すと信じている。
世界に目を向けると、経済のグローバル化はす
でに止めることのできない歴史的流れとなってい
る。グローバルな産業チェーンやサプライチェー
ン、バリューチェーンは高度に融合している。し
かし、その一方で保護主義や一国主義が台頭し、
多国間主義と自由貿易体制が揺さぶられ、世界の
発展はなお多くのリスクと不確実性を抱えてい
る。周辺を見渡せば、われわれの置かれているア
ジアは世界で最も成長活力のある地域である。ま
た、世界の経済成長を引っ張る主要なエンジンで
もあり、地域一体化のプロセスは加速期に入って
いる。足元を見れば、中日両国は新たな発展段階
に入っており、双方の相互補完の強みがはっきり
し、協力の潜在力は極めて大きくなっている。両
国関係の改善・発展に伴い、双方の互恵協力は新
たなチャンスを迎えつつある。
われわれは、共同で経済・貿易協力の質の向
上・高度化を図る必要がある。双方は、科学技術
イノベーションや省エネ・環境保護、介護・医療、
財政・金融など重点分野での協力を一段と強化
し、中日の互恵協力のために新たなエネルギー
を注ぐべきである。われわれは共同で第三国市
場における協力(1 )を進めるべきである。また、
双方が第三国市場協力のモデルプロジェクトの
早期実現をさらに進めるべきである。われわれ
は日本側が「一帯一路」の協力に積極的に参画
し、中日の互恵協力がいっそう広々とした舞台
へ向かうことを歓迎する。われわれは共にアジ
ア太平洋地域一体化のプロセスをリードする必
要がある。われわれは地域諸国の普遍的な願い
に積極的に応え、中日韓の自由貿易協定( F T
A )および東アジア地域包括的経済連携( R C E
P )の交渉を加速させ、地域各国の包摂的で恩恵
をあまねく享受できる発展の実現を後押しすべ
きである。われわれは共に自由貿易体制を守る
必要がある。中日両国は共に自由貿易体制の重
要な受益者であり、われわれには多国間貿易体
制をしっかり守り、一国主義と保護主義に旗幟
を鮮明にして反対し、貿易と投資の自由化・円滑
化を絶えず推し進め、開放型の世界経済を築く
責任と義務がある。
新たな情勢の下で、中日双方は時代の流れに
沿い、チャンスを捉え、両国の指導者による重
要なコンセンサスを実行に移さなければならな
い。そして中日の互恵協力を新たな段階に押し
上げて、両国と両国民にさらなる幸せをもたら
し、さらに手を携えてアジア地域および世界の
平和と繁栄にしかるべき貢献をしていかなけれ
ばならない。
私は1 9 4 0年、農村に生まれた。新中国成立
後、特に改革開放以降は、中国の人民が貧困と飢
えの状態から基本的な衣食が満ちたりて、さらに
いくらかゆとりのある暮らしを実現し裕福な生
活に向かうまで――その時代の移り変わりを直
接体験して来た。つまり、中国人民が立ち上がり、
豊かになり、強くなるまでの歴史的な飛躍を見届
けてきた。40年前、中国は改革開放という偉大な
歴史的歩みを始めた。改革開放は現代中国の命運
を決する重要な選択で、中国発展の歩みにおいて
必ず通らなければならない道であり、改革開放が
なければ今日の中国はなかったと身をもって感
じている。改革開放は、中国に天地を覆すような
変化をもたらし、人々の様相も一変した。
中国を変え世界にも影響
中国は現在、すでに世界第2の経済大国であ
り、第1の工業国、第1の物品貿易国、第1の外
貨準備国になっている。この40年に、中国は年平
均9・5 %の経済成長を実現し、国民1人当たり
の可処分所得は22・8倍増え、7億4 0 0 0万人
の貧困脱却に成功した。
改革開放は中国を大きく変えるとともに、世
界に大きな影響を与えた。中国は、門戸を開い
て国を建設する姿勢を貫き、常に胸襟を開き、
世界を受け入れ、各国とのウインウインの協力、
共存共栄に力を尽くしている。また中国は長年、
世界経済の成長への寄与率が連続またして30 %
を超え、アジア通貨危機と世界的な金融危機へ
の対応で大きく貢献し、世界の経済成長の主要
な安定装置と動力源になった。さらに中国は現
在、日本を含む1 3 0カ国余りの主要な貿易相
手となっており、中国の発展は世界各国に大き
なチャンスをもたらしている。
改革開放に参画・受益の日本
習近平主席は、改革開放は中国と世界が共に
発展、進歩する偉大な歩みだと述べた。われわれ
は、この中に日本の重要な貢献があったことも
忘れてはいない。2 0 1 8年は、中国の改革開放
の総設計師と呼ばれる鄧小平副総理(当時)が訪
日した40周年でもあった。この時の鄧小平副総
理の訪日は、新中国成立後、中国の指導者による
初めての正式な日本訪問だった。鄧氏は、中日平
和友好条約の批准書の交換式に出席後、新幹線
に乗り、日本の近代的な工場を見学した。当時、
鄧氏が話した二つの感想がよく知られている。
一つは日本の企業を見学した時の「(工場を見
て)現代化とは何か分かった」であり、もう一つ
は新幹線に乗った感想で、「速い速い。まるで背
中を押されて走っているみたいだ。これこそ今
の中国が必要としているスピードだ」というも
のだ。この一幕は中国人民の脳裏に深く刻まれ、
われわれは中国と世界の開きを痛感し、改革開
放の道を歩む決意を固めた。その2カ月後、世界
が注目した中国共産党第11期中央委員会第3回
全体会議が開かれ、改革開放の大いなる幕が開
かれたのだ。
日本は、中国の改革開放の重要な参画者・受益
者として、中国の発展を支援するために積極的
な貢献を果たした。日本政府は円借款など政府
開発援助( O D A )を供与して、中国のインフラ
整備を支援した。多くの日本企業が中国市場に
参入し、3万社余りが中国に投資して工場を建
て、対中国の累計投資額は1 0 0 0億㌦を超え
た。今では中日間の貿易額は3 0 0 0億㌦を超
え、人的往来も延べ1 0 0 0万人の時代に入っ
た。両国と両国民に巨大な実際の利益をもたら
しており、互恵・ウインウインの手本と言える。