第三国市場協力に期待
中国国際交流センター副理事長、元商務部副部長
さらに世界の経済発展をけん引できるだろう。
中米貿易摩擦が緩和されている機会を捉え、中
米貿易関係がRCEPと中日韓FTA交渉に与
える影響が比較的に小さくなっているチャンス
を生かし、交渉を加速させ、実質的な進展を得る
よう取り組むべきだ。
二つ目は、自由貿易と世界貿易機関(WTO)
を中心とする多国間の貿易体制を守り、多国間活
動におけるコミュニケーションと調整を強化す
ること。自由貿易から恩恵を受ける中国と日本
は、WTO改革などの課題について共通認識を持
ち、開放、包摂、非差別、発展途上国の権益と制
度整備を保障するといったWTOの核心的な価
値と基本原則を認める。また、中日両国はWTO
改革において、協力する可能性がある。両国は
WTOを離れ新たな秩序をつくることは望んで
いない。改革を通じて、WTOを時代と共に発展
させ、ルールを原則とする多国間貿易体制を強化
することを主張している。デジタルエコノミーや
越境Eコマース、金融改革など多くの分野は、今
後WTO改革が直面する新たな分野だ。中国と日
本は協力し、こうした分野での新たなルール作り
に取り組めるだろう。
実は、中国がWTO加盟を申請した当時、日本
から積極的な支持と注目を受けていた。1999
年7月、中日二国間交渉が妥結された。日本は西
側諸国の中で、早い時期に中国との交渉を終えた
国の一つだった。また、中国のWTO加盟後、朝
日新聞や毎日新聞など日本の主要メディアも、そ
の後の新しいビジネスチャンスの到来に高い期
待を示し、前向きに評価した。この間の歴史を振
り返れば、中国と日本は現在、まさに手を携えて
共にWTO改革に対応し、共同方策を打ち出すべ
きだと考える。
2 0 1 9年は、6月に大阪でG20サミットが
開かれる予定で、中国と日本にとって、いっそう
パートナーシップを強化し、マクロ政策をより適
切に調整し、共に自由貿易を守るとともに、世界
経済の力強く、バランスの取れた、持続可能で包
摂的な発展を促す良い時機である。これをきっか
けに、中日の経済貿易協力が新たなブームを迎え
ることを期待する。
2 0 1 8年は中国改革開放40周年に当たり、ま
た中日平和友好条約締結40周年に当たった。改革
開放の成功は日本から学んだ経験と切り離せな
い。また中国経済の発展と消費の拡大に伴い、中
国も日本の主要な市場の一つとなった。
過去40年余りにおいて、日本の対中投資は主に
「投資―輸出」型で、日系企業が中国に投資し工
場を建て、製品を他国に販売するモデルだった。
しかし、現在はこの日本の投資モデルが徐々に
「投資―現地消費」型へと変わって来ている。日
本は、4億人余りの中流層を抱える中国消費市場
をますます重視するようになった。
中日の経済貿易関係を高める第三国協力
18年1月から8月のデータによると、中日貿易
の総額は2141億㌦に達し、前年同期比で11・
%増えた。とりわけ、医療やヘルスケア、文化、2
教育分野における投資の増え幅が大きかった。ま
た、同年1〜8月の日本の新規対中投資企業数は
社で、前年同期より45 %近く増えた。投資529
分野もこれまでの日用品や機械製品から、新エネ
ルギー、新素材などのハイテク産業やサービス業
へと変わって来ている。
上述のデータや変化から、中日の貿易関係は40
年余りの発展を経て新しい時期に入り、新たな進
展が見込まれている。今後3年から5年の間は、
中日の経済貿易の発展にとって、重要なチャンス
の時であり、両国の経済貿易協力を進める受け皿
あるいは切り口としては、まさに第三国協力とな
るだろう。
18年10月26日、安倍晋三首相が訪中の間に開か
れた中日第三国市場協力フォーラムにおいて、合
計52件の協力覚書が結ばれた。これらのプロジェ
クトには共通した三つの特徴がある。一つ目は、
技術設備、資金、人材、管理モデルなどにおいて、
中日がそれぞれの優位性を生かしたこと。二つ
目は、互恵・ウインウイン、市場を共に開拓する
精神を基に協力を展開し、市場ルールにのっとっ
て、プロジェクトを運営すること。三つ目は、中
国と他の国との第三国協力の模範となること。
これまでに中国が他国と共に第三国で市場を
開拓した例としては、中国企業とフランス電力
による英国ヒンクリー・ポイントの原発計画や、
中国と米国によるギニアのボーキサイト共同開
発などがある。しかし、これは個別の案件で、今
回の中日間ほど規模が大きく、数や分野、関わる
国が多いケースはこれまでなかった。日本が中国
と協力する先手を取ったと言えるだろう。19年、
中国と日本の貿易額は、中国と欧州連合(EU)、
中国と米国の貿易額を上回る可能性が十分にあ
る。
自由貿易を共に守る
18年10月、安倍首相が訪中し、習近平国家主席
と会談した。続いて11月30日アルゼンチンのブエ
ノスアイレスで開かれたG20サミット(主要20カ
国・地域首脳会議)で、両首脳は多国間外交の場
を利用して再び会談した。この会談で、双方は中
日の経済貿易協力により高い期待を示した。この
中で、注目すべき点が二つあると思う。
一つは、東アジア地域包括的経済連携
(RCEP )と中日韓の自由貿易協定(FTA)交
渉の早期妥結を目指すこと。これは両国が共に地
域経済の発展を促したいという明確なメッセー
ジを発信した。経済のグローバル化が不確定な要
素に直面し、一国主義(7 )や保護貿易主義が世界
の自由貿易を脅かしている今、世界第2、第3の
経済大国である中国と日本が手を携えれば、東ア
ジアだけではなく、アジアやアジア太平洋地域、