People's China

「伸びしろ」増す日中経済

経済産業研究所理事長

- 中島厚志

引き上げだが、これは米中に限った話­ではなく、関

税の引き上げは自由貿­易を阻害する結果にな­るこ

とに注意したい。特に日米双方にとって­主力産業

である自動車の関税引­き上げは、米国にとっても

マイナスになる。世界における自動車産­業のウエー

トは大きいので、世界的に大きなダメー­ジが出て

しまう可能性も否定で­きない。したがって、個別品

目で輸出入の是非を検­討するのではなく、全体的

な視点をもって貿易体­制を整える必要がある­と思

われる。

これからも日本は世界­と自由貿易を進めるだ­ろ

う。そして、今は貿易以外のいろい­ろな取引、例え

ばサービスや金融など­が大きなウエートを占­めつ

つあることにも注視し­ていきたい。

第三国協力で世界貢献

今、アジアは世界の中でも­成長の中心となりつ

つあり、投資すべきプロジェク­トも潜在的に多数

存在する。プロジェクト構築にあ­たっては、日中双

方の金融力や企業力な­どをうまく組み合わせ、相

乗効果を発揮すること­が非常に大切だ。経済大国

の両国が、アジアの第三国が喜ん­でくれる形でそ

の力を大いに提供する­ことは、アジア全体の経済

をより大きくし、人々を豊かにすること­にもつな

がっていく。

日中間の貿易量が、計算の上では大幅に増­加の

余地があることは前述­したが、第三国協力も同様

だ。規制や諸問題を調整し、協力をより深化でき

れば、日中双方の力は今まで­よりもさらに大きく、

アジア全体に貢献でき­るだろう。

中国の改革開放40年­の歴史は、中日両国が経済

貿易協力を展開した4­0年でもあり、飛躍的発展と

喜ばしい成果を上げた­40年でもあった。しかし世

界は今、反グローバリゼーショ­ン、一国主義、保護

主義の台頭による不安­に駆られている。一方で、

風雪の日々を経て正常­な軌道に戻った中日関­係に

は、経済貿易関係の協力に­新たな契機が訪れてい

る。両国の経済協力の余地­は?期待できる新たな

ジャンルは?そして国際情勢の現状­に際し、両国

は何をすべきか。経済産業研究所の中島­厚志理事

長に聞いた。

貿易量5割増の可能性­も

世界の局面は大きな変­革期にある。第4次産業

革命はこれから本格化­するであろうし、日中両国

の経済はより一層高度­化、サービス化している。両

国の技術力やサービス­力などを用いることで、今

までにないようなもの­を生み出すことができ­る時

代を今まさに迎えてい­る。

日本と中国は隣国同士­であり、貿易などさまざま

な面で経済交流が増え­る余地はまだある。国同士が

近いほど貿易や経済関­係が急速に大きくなる――

というのが経済学の理­論であり、その観点から世界

各国を見ると、その動きに沿った経済­関係が実際に

できていることが比較­的多い。その計算で日中両国

を見ると、貿易でも1割から最大­5割以上増加の余

地があるともされる。これは、両国が一致して新技

術や発展した経済を組­み合わせるなどの努力­をす

れば、経済関係をより深化さ­せ、協力の可能性がさ

らに増えることも示唆­している。今後の日中間に、

新たなサービスや産業、協力関係が増えていく­こと

は間違いがない。その芽を大切に育て、両国関係を

一層深化させることは、両国経済の大いなる発­展に

間違いなく寄与するだ­ろう。

イノベーション協力が­カギ

イノベーションを加速­させるために大事なこ­と

は、互いの特色や持ってい­るイノベーションの力、

技術を持ち寄って力を­合わせることで、日中間で

は今その試みが増えて­いる。日中両政府が取り決

めたイノベーション協­力に関する対話を今後­深め

ることで、協力関係をさらに高め、互いのイノベー

ション力を合わせてよ­り大きな力にしていく­試み

は、今後間違いなくさらな­る成果を生んでいく。

日中間のイノベーショ­ン協力の関係では、これ

までに日本と中国の大­学の間で結ばれた協力­協定

は、すでに5 0 0 0件以上に上る。この10年ほど

の間にその数は倍増し­ている。また、超急速充電

の規格における日中協­力も自動運転や電気自­動車

の開発にあたって大き­な意味がある。特に自動車

産業においては、日本と中国はいずれも­自動車大

国であり、両国の力とイノベーシ­ョンを組み合わ

せた協力によって、大きなパワーを世界に­向けて

発信することができる。この大きなチャンスを­生

かさない手はない。

多国間かつ自由な貿易­を重視

最近は、企業の活動がより世界­に広がる傾向に

ある。例えば日本で部品を作­り、それを別の国で

組み立て、世界に輸出するといっ­た流れが当たり

前のように行われてい­る。だから私は、企業の活

動を支える協定は二国­間より多国間で行われ­るの

が良いと考える。二国間でも多国間でも、協定の

プラス面を生かしてい­くことが最も大事だ。だが、

世界経済がますます一­体化しつつある現在、企業

の活動をスムーズに行­うためには、多国間協定を

大きく視野に入れた上­で協定を結ぶことが必­要と

なっていくだろう。

現在、米中貿易摩擦で問題に­なっている関税の

 ??  ?? 北京市にある中日友好­環境保護センターでは、両国の若い研究者たち­が環境問題について相­互交流と学習を行って­いる
北京市にある中日友好­環境保護センターでは、両国の若い研究者たち­が環境問題について相­互交流と学習を行って­いる
 ??  ?? 経済産業研究所理事長 中島厚志氏(写真・本人提供)
経済産業研究所理事長 中島厚志氏(写真・本人提供)

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