「一帯一路」沿線国で開花へ 新時代迎えた改革開放政策
阻止する必要がある」と強調しています。
多国間貿易体制の維持は多くの国が支持
するところですが、それでも、今回のA P
ECサミットで首脳宣言が発表できなか
ったことは、時代の潮流に挑戦する勢力
があるということでしょう。
では、中国は「多国間貿易体制の維持、
保護貿易の阻止」にどんな処方箋を用意
しているのでしょうか。何といっても、「一
帯一路」と国際輸入博はその有力な処方
箋となるでしょう。この点、習主席はA
PECビジネス指導者サミットで行った
基調講演(テーマは「同舟共済で美しい
未来を創造しよう」)でこう発言
しています「。中国はすでに140
余りの国・国際組織と『一帯一路』
協力協議を締結している。私が強
調したいのは、『一帯一路』の共同
建設は開放のための協力のプラッ
トフォームである。中国は世界と
チャンスを分かち合い、共同発展
の陽光の大道を歩む。来年開催す
る第2回『一帯一路』国際協力サ
ミットフォーラムに各位を招待す
る」。さらに、「世界が参加した国
際輸入博で、中国が貿易自由化を
支持し、世界に市場を積極開放す
る決心があることを証明した。来
年開催する第2回国際輸入博へ各
位の参加を歓迎する」と述べまし
た「。一帯一路」や国際輸入博のよ
うな国際公共財を世界に提供す
ることが、新時代の改革開放であ
り、世界における中国の貢献を見る視点
になると言えるのではないでしょうか。
歴史的選択迫る世界経済
今回でG20サミットは10周年を迎えま
した。10年前といえば、米国発リーマンシ
ョックの発生で世界経済は大きな打撃を
受けました。昨年は一国主義、保護主義の
台頭で世界経済への影響が懸念されてい
ました。そんな状況下で開催されたG20
サミットでは、2週間前に開催されたAP
ECサミットで発表できなかった首脳宣
言は出されたものの、これまでの首脳宣
言に盛り込まれてきた「保護主義と闘う」
という文言が明記されませんでした。そ
の背景には開放型世界経済、多国間貿易
主義を掲げるG20の精神に挑戦する勢力
があるとする識者や報道が少なくありま
せん。習主席は、G20サミットの重要講話
で、「世界経済は再び歴史的選択に直面し
ている」と問題提起し、「パートナーシッ
プ(注3 )は、G20の最も貴重な財産であ
る」と強調しています。いずれも、G20参
加国の総意を代表する直言と言えます。
中国は、改革開放40年に多国間貿易体制、
対外開放を実践し、世界経済の成長率に
対する貢献率(30 %余り)で世界最大の貢
献をしています。その姿勢は、今や、「一帯
一路」や国際輸入博に受け継がれている
と言えます。首脳宣言に盛り込まれなか
った「保護主義と闘う」の姿勢は、習主
席の重要講話で代弁され、支持を得たと
言えるのではないでしょうか。
最後に、今回のG20サミットでの日中
首脳会談で習主席は安倍晋三首相に、「日
本が来年ホスト国となるG20サミット開
催を支援する」と強調しています。多国間
貿易体制の支持では日中両国は立場を同
じくしています。今年の首脳宣言に「保
護主義と闘う」という文言が明記される
のを期待したいものです。
1 9 7 8年12月の中国共産党第11期
中央委員会第3回全体会議で改革開放
政策が始まってから丸40年後の昨年11
月、世界が注目した大イベントと国際会
議が相次いで開催されました。すなわち、
①上海で開催された国際輸入博覧会(本
誌昨年12月号参照)②「双十一」(注1 )
③パプアニューギニアで開かれたアジア
太平洋経済協力会議( A P E C )サミッ
ト④アルゼンチンで開かれた主要20カ
国・地域( G20 )サミットです。これら2
大イベントと2サミットは、「改革開放40
年来の成果」と「世界における中国」を
見る試金石となったと言えます。1カ月
間に世界が注目する大ビジネス・イベン
トを複数開催し、国際会議でその言動が
大きくクローズアップされる国は、今、
中国をおいて他にはないでしょう。
国際輸入博でプレゼンス
昨今、改革開放は新時代を迎えたとの
表現をよく目にします。どんな新しい時
代の到来なのでしょうか。昨年11月の「4
大行事」にそのヒントが認められます。
まず、世界172カ国から3000社
余りが出展した国際輸入博で注目すべき
は、「一帯一路(シルクロード経済ベルトと
21世紀海上シルクロード)」のプレゼンス
が目立っていたことが指摘できるでしょ
う。例えば、「一帯一路」沿線国のほぼ90%
に当たる58カ国から1 0 0 0社余り(全
出展企業のほぼ3分の1)の出展があった
こと、また、アパレル類、日用品、食品・農
産物などの従来の商品に加えて、工業用
ロボット、デジタル化工場、無人運転車な
ど第4次産業革命に関係する製品展示が
少なくなかったことなどです。
筆者は「、一帯一路」を改革開放の国際化
と見ています。この点、国際輸入博では、
中国が「一帯一路」沿線国へ改革開放の経
験を輸出し、同沿線国からその成果物と
なる「メード・イン・一帯一路」を輸入す
るといったウインウイン関係が構築され
つつある事例が多々認められました。改革
開放の新時代は「一帯一路」沿線国で花開
こうとしているわけです。
世界の消費拡大「双十一」
イベント開始直後に、日本の大手百貨
店の年間売上額を上回った「双十一」では
どうでしょうか。この日、「メード・イン・
チャイナ」は言うに及ばず、世界の製品・
サービスに膨大な注文が殺到。筆者の友
人は「双十一」で仕留めた格安航空券で
北海道へ家族旅行をしています。
「双十一」の売上額は年々更新され世界
の消費拡大に貢献しているわけですが、
何より驚かされるのは膨大な注文品の発
送業務です。中国国家郵政局のモニタリ
ング・データによると、昨年の「双十一」
における電子商取引( E C )業者の注文書
取扱量は13億5 2 0 0万個(前年同期比
25・1%増)に達したとされます。10億個
超の宅配郵便物とは、米国における20日
間分、英国の4カ月分の宅配便取扱個数
に相当するほか、中国の06年の宅配便取
扱個数にも匹敵するなど、天文学的な量
といっても過言ではないでしょう。ちなみ
に、一昨年度の日本の宅配便取扱個数は
42億5 0 0 0万個(国土交通省発表)です
(注2)「。双十一」の取扱量の膨大さが分か
ります。こうした膨大な宅配量をより早
く配送するためには、ビッグデータ、人工
知能(AI)、モノのインターネット(IO
T)、ロボット、自動化ピッキング、無人倉
庫といった第4次産業革命を代表する先
進技術の活用が不可欠です。目下、中国企
業はこうした分野への投資が急拡大して
います。新時代の改革開放が向き合うの
は、第4次産業革命にあることを「双十一」
は問い掛けているのではないでしょうか。
習主席「保護貿易阻止を」
A P E Cサミットでは、慣例の首脳宣
言が発表できませんでした。多国間貿易
体制の維持と保護貿易主義の調整がつか
なかったことが主因の一つとされていま
す。中国は、「大多数のA P E C参加国は
望まなかった事態」(18年11月20日の中国
外交部定例記者会見)としていますが、中
国の多国間貿易体制を堅持する姿勢は一
貫していました。この点、習近平国家主席
は、APECサミットの基調講演(テーマ
は「時代のチャンスを捉え、アジア太平洋
の繁栄を共に図る」)で、「地域経済統合を
推進し開放型アジア太平洋経済を構築す
る。貿易と投資の自由化および円滑化を
推進すべきであり、ルールに基づく多国間
貿易体制を断固として守り、保護主義を