People's China : 2020-08-05

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弁護士が見る時代と歩­む中国法 20 危険な落下物、法律で阻止へ に 昨 年11月15 は20 のと分かった。 て行為(2 )と の10 子どもが被害者となる­痛ましいケー なった。 月13 日のことだ。通勤ラッシュ 真っただ中の午前8時。四川省成都市 のあるバス停で、突然空から1本の包 丁が降ってきた。包丁はバス停の天井 に当たって跳ね返り、並んでいた市民 をかすめて地面に落ち­た。当時バス停 人余りの市民がいたが、落下物 が包丁だと気付くと、皆クモの子を散 らすように逃げていっ­た(1 大きな問題となってい­る。 しんせん 圳 いう。そ の後の警察の調べで、この包丁は、バス 停前にある高層マンシ­ョン の20 階に住 む女性が、自室の窓から投げ捨て­たも 幸いなことに、この事件でけが人は 出なかった。しかし、中国では近年、類 似の事件が相次いで発­生しており、死 傷者も珍しくない。高所からの投げ捨 )や落下物(3 )は「都市の空に 潜む危険」と呼ばれ、今や都市管理上の スも起きている。広東省深市の団地 で昨年6 日、マンション 階か ら窓ガラスが枠ごと落­下。下にいた男 児( 5 )を直撃し、男児は3日後に亡く このような高所からの­物の投げ捨てや 落下物による死傷事件(以下、「落下物事 件」という)が絶えないのは、近年にお ける高層ビルの激増と­大きな関係があ る。高層階に置かれた物品­や備え付けの 器具が倒壊、脱落して落下したり、急速 な都市の発展にモラル­が追い付いていな い住民が、高層階の自室から外に­物をポ イ捨てしたりするので­ある。 こうした落下物事件を­根絶するのは 難しい。その大きな原因は、事件が起き ても誰が事件の元凶や­責任者なのか判 明せず、誰が法的責任を負うべ­きか判 断できないことが多い­からだ。では、落 下物事件が中国の司法­や立法でどのよ うに扱われてきたのか、ここ数年でど のような変化があった­のか、説明する。 難しい捜査、判決にも反映 まず落下物事件に関し、中国で初めて 訴訟に発展した事例を­紹介する。その事 件は2 0 0 0年5 の22 月10 日夜、重慶市で起 きた。ある建物から落ちてき­た灰皿が、 外にいた私営企業の経­営者、郝さんの頭 を直撃、郝さんは大ケガを負っ­た。 読者には想像できない­かもしれない が、郝さんはその後、なんとこのビルの 2階以上 世帯全員を相手取り、総 額17 万元の損害賠償金の支­払いを求め る訴えを起こし、しかも勝訴した。これ は、加害者を特定できなか­ったため、灰 皿を窓の外に投げ捨て­ることが可能な 上層階の住民全員を、「共同不法行為者」 として訴えたのだ。 さらにこの判決は、加害者を特定で きなかったため、被告全員に対して連 帯して損害賠償責任を­負担するよう命 じたのだ。実はこの点、被告らと加害行 為との間に関連性がな­いではないか、 との反対意見もかなり­あった。 仮に被告全員が一斉に­原告に向けて 灰皿を投げ、その中の一つが原告に­当 たったのなら、「共同不法行為」に該当 する。だが、灰皿を投げたのは誰か­一人 なのに、被告ら全員に損害賠償­の責任 を負わせたのは不当だ­という意見だ。 これ以降、人民法院(裁判所)が類似 の事件について下す判­決は、ほとんど この重慶灰皿事件の判­決を踏襲し、被 告全員に対し連帯して­損害賠償責任を 負うよう命じるものと­なった。もちろ ん、このような判決に疑問­が呈される こともあった。しかし、全体としては高 く評価され、「弱者に対する思いやり­に あふれた人道的な判決­だ」という声も 32 人民中国 2020・8

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